導入事例インタビュー『国立環境研究所様』
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2026/06/02
国立研究開発法人 国立環境研究所(茨城県つくば市)の地球温暖化研究棟に、セイコータイムクリエーションのデジタルサイネージが導入されています。温室効果ガスを宇宙から観測する衛星「GOSAT」シリーズの運用日数や、世界各都市の時刻、観測データなどを来訪者に向けて発信しています。
「衛星を打ち上げたあと」から始まる研究の魅力とそれを伝えるデジタルサイネージについて、同研究所 地球システム領域 領域長の谷本浩志様にお話をうかがいました。

国立環境研究所 地球システム領域 領域長 谷本浩志 様
―はじめに、国立環境研究所の役割と、谷本様のお仕事についてお聞かせください
国立環境研究所は、環境省所管の国立研究開発法人です。職員はおよそ930人で、そのうち約230人が研究者です。大気や海、陸、生物、資源循環、そして人の健康や社会まで、「地球の環境」に関わるあらゆる分野を扱っています。
私は地球システム領域の領域長を務めていますが、専門分野は「大気化学」です。特に、大気に含まれる化学物質、たとえば二酸化炭素やメタンといった温室効果ガスや二酸化窒素やオゾンなどの大気汚染物質が、気候や環境をどのように変えているのかを調べています。
いま私たちが力を入れているのが、温室効果ガスを宇宙から観測する衛星「GOSAT」です。衛星といえばロケットでの打ち上げのインパクトが大きいと思いますが、私たちの仕事は「衛星を打ち上げた後」から始まります。軌道に乗った衛星からデータを受け取り、地上や航空機、船舶の観測データと照合・検証し、「環境対策に使えるデータ」にしていくことが、私たちの腕の見せどころです。
―地球温暖化研究棟のリニューアルと、デジタルサイネージ導入の背景を教えてください
地球温暖化研究棟は2001年に建てられました。エントランスホールには研究者をはじめ、行政関係者、メーカーの方々、学会や国際会議の出席者、一般公開で訪れるご家族連れまで、多くの方がいらっしゃいます。
ホールには長らく紙のポスターを掲示していたのですが……私たちの研究は「モノをお見せしにくい」のです。衛星は宇宙にあり、観測データもそのままでは目に見えません。計算機、いわゆるスーパーコンピュータもありますが、好きな人にはたまらなくても、なかなか華やかには映りません(笑)。近隣には、ロケットや加速器といった「映える現物」を持つ研究機関も多く、私たちの取り組みをどのように伝えていくかは課題になっていました。
そこで「伝え方を変えよう」と考え、ホールをリニューアルするタイミングでデジタルサイネージを導入することにしました。いくつかのメーカーに相談する中で、すぐに、そして丁寧に応えてくださったのがセイコータイムクリエーションさんでした。
―デジタルサイネージには、どのようなコンテンツを表示していますか?
特徴的なのは、衛星の運用時間をリアルタイムで更新する「カウントアップ」表示です。初代の「GOSAT」、2号機の「GOSAT-2」、そして打ち上げられたばかりの「GOSAT-GW」の3機を並べ、打ち上げ以降の時間を毎秒更新しています。
この機能は、セイコータイムクリエーションの担当の方からご提案いただきました。私が「衛星は打ち上げてからが仕事です」とお話ししたのを受けて、それをカウントアップという見せ方で伝える方法を提案していただいたものです。
打ち上げまでの「カウントダウン」はよく目にしますが、「カウントアップ」という見せ方は、ちょっと珍しいのではないかと思います。
初代GOSATは、すでに運用歴17年になります。宇宙の機器は、スペースデブリが当たったり不具合が出たりして、急に止まってしまうこともあります。これだけの長期間、休まず動き続けているのは、それ自体が本当に価値あることで、貴重なデータが得られていることなのです。数字が積み上がっていく様子を見ると、来訪された方はもちろん、ここで働く私たち自身も、思いを新たにしてまた頑張れる。良い表示を作っていただいたと思っています。
―そのほかには、どのようなコンテンツや展示がありますか
世界各都市の時刻を並べた世界時計を表示しています。東京、ロサンゼルス、ロンドン、ワシントンD.C.、バンコク、インドのニューデリーの6都市の標準時で、いずれも私たちが共同研究をしている国や、連携する研究機関のある都市です。時計を眺めるだけで、私たちの研究が世界とつながっていることが伝わればと思っています。
あわせて、GOSATが捉えた観測データのグラフなども表示しています。コンテンツ制作は、研究チームと広報チームで素材をそろえ、セイコータイムクリエーションさんにもご協力いただいています。
ホールには、衛星の8分の1スケールの模型も展示しました。本当は天井から吊るしたかったのですが……太陽電池パネルが長くて、製作会社の方に「この形状では折れてしまいます、地球には重力があるんですよ」と言われてしまって。台座に置く形に落ち着きました。
―デジタルサイネージを導入して、どのような点が良かったと感じていますか
デジタルサイネージは、メッセージが伝わりやすいですね。同じ情報でも、パソコンやスマホの画面で見るのと、ホールのディスプレイで見るのとでは、印象がまるで違います。歩いていて、ふと目が止まる。あの「ふと」が良い。
研究者の言葉は、そのまま語ってもなかなか伝わりにくいものです。たとえば、われわれの場合は「将来の気温が、3度プラスマイナス1度ほど上がる可能性がある」といった表現になる。誠実であろうとするほど誤差の表現を含み、逆に複雑でわかりにくくなっていきます。誤差や曖昧な情報をビジュアルで表現し、直感的に表示するサイネージは心強い存在です。
コンテンツの差し替えも手軽にできるため、地球システム領域内の広報チームも「自分たちで操作できるのか」と興味を持っています。ゆくゆくは内製コンテンツの発信にもつなげてみたいですね。
たとえば、NASAとの共同研究では、衛星が地表を観測するタイミングに合わせて航空機を飛ばし、宇宙と地表から同じデータを観測しました。その際、大きなカメラを持った航空ファンの方々が集まっていました。こういった取り組みの情報は、意外と楽しんでいただけるのかもしれないと考えています。
―今後、サイネージをどのように活用していきたいですか
たとえば、「先週の地球の二酸化炭素」といった情報を、サイネージやウェブから発信したいですね。「GOSAT-GW」は3日間の観測で地球一周分の情報を取得するため、数日前のデータは表示できるはずです。
また、北海道の釧路や沖縄の波照間島、富士山頂などで観測しているデータもあります。そうした観測拠点のデータをリアルタイムで映し出し、「どこで、なぜ観測しているのか」という現場の感覚もあわせて伝えてみたいですね。
―最後に、これからの情報発信について、お考えをお聞かせください
多くの方が、地球や環境への関心を持っています。あらゆる人に向けて、私たちの持っている情報を届ける機会を、できるだけ増やしたいと思っています。どこで見たものが心に残るかは、誰にもわかりません。だからこそ、ふと見て、ふと覚えていて、ふと行動が変わる——そんなきっかけをたくさん作りたいですね。
地球環境の変動は、喫緊の課題です。次世代への影響は大きく、残された時間はそれほど多くありません。私たちがどれだけ正しい研究を重ねても、人の行動が変わらなければ環境は良くなりません。行動、つまりアクションにつながる研究と情報発信を、これからも続けていきたいです。
_________今回は、お忙しいところ貴重なお話をありがとうございました
お客様プロフィール
名称
国立研究開発法人 国立環境研究所(National Institute for Environmental Studies)
所在地
〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
事業内容
環境に関する科学的な調査・研究、観測データや知見の提供 ほか
URL
https://www.nies.go.jp/

