導入事例インタビュー『藤岡市複合施設 ふじまる様』
トピックス
2025/11/19
令和7年10月、群馬県藤岡市に複合施設「ふじまる」がオープンしました。地域で長年愛された歴史ある場所に「子育てと図書館を核とした複合施設」として設立され、市民の生活の豊かさや利便性の向上、市街地の活性化を担うことを目指しています。
ふじまるの設立を主導した藤岡市 健やか未来部 複合施設建設室の秦聖史さまから、地域貢献のねらいと施設運営を支えるデジタルサイネージの活用について伺いました。

―ふじまる設立の経緯をお聞かせください
この土地には、もともと「藤岡総合病院」がありました。何十年も地域に根付いた病院で、現在でも「旧病院の場所」と呼ばれるくらい、市民にとって大切な土地です。
老朽化に伴って病棟の建て替えが必要になり、平成29年に藤岡インター近くにすべての病院機能が移転した後、この広大な土地と建物をどう活用するか、という課題が残りました。当初は建物をそのまま他の用途に転用する案も検討したのですが、「老朽化した病院」という特殊な環境は、アミューズメントにも企業誘致にも適しませんでした。そこで、「地域に貢献できる、まったく新しいものを作ろう」という判断をしました。
市内の有識者を集めた「利活用検討委員会」を立ち上げ、そこで「市街地の活性化につながるもの」「地域住民の生活が豊かになるもの」という提言をうけて、活用方法を検討。活用に係る基本的な市の考え方を示した基本構想を策定しました。
全国60か所ほどの類似施設を視察しながら藤岡市に必要な機能や課題の解決策を検討していき、図書館を中心に、子育て・健康センター(旧保健センター)、多目的ホール、プレイルームの4つの機能を複合的に提供する場所として事業を進めました。
ふじまるは、機能の関連付けや連携、流れといった「融合」を強く意識しています。「子育て健康センターで検診をした帰りにプレイルームで遊び、ついでに本を借りて帰る」や、「図書館に来た人がカフェに寄り、多目的ホールでの展示会を覗いてみる」など、1回の来館で複数の目的を達成したり、新しい世界に触れたりできる施設を目指しました。
―オープンから1週間ほどになります。地域の方からの反応はいかがですか?
オープン初日はイベントも開催されたため、たくさんの人が来てくれました。現在は、若い世代の利用が特に多いですね。平日は、午後2~3時くらいから小学生、その後に中学生、そして夕方5~6時くらいから高校生が来ます。
ふじまるの図書館は、「居心地の良さ」「居場所の多さ」「勉強のしやすさ」を重視し、手に取りやすい面出しの陳列、長居したくなるような椅子や、グループで集まれる部屋、静寂個室などを設けています。それらに効果が出ているようで、子どもが多い時間帯はとても賑わっています。家に居場所がない子や、家が勉強しづらい環境である子を救える場所にしたい、という狙いもあったので、とても喜ばしい状況です。
小さな子どもを育てる支援の軸としているのが、プレイルームと託児ルームです。昨今の気候は、夏は酷暑が続き、冬は厳しく冷たい風が吹き付けるため、小さなお子さんを遊ばせる環境に限りがありました。そこで、図書館の隣室に玩具会社「㈱ボーネルンド」と連携したプレイルームを設けました。毎朝整理券の列ができるほどの人気です。
表示式のサイネージでは、市の催し、公的なお知らせ、地域のイベントなど、さまざまなコンテンツを表示しています。また、消防設備の音声案内と連携して、火災などの緊急時は災害対応のフローに従ったアラート表示や避難誘導案内が文字情報として表示されます。音声の案内と文字情報の表示で、視覚や聴覚にハンデのある方を取り残さない避難計画を立てています。
―デジタルサイネージはどのようにご利用いただいていますか?
まず、ふじまるは、施設運営において「なるべくデジタルを活用する」という方針を取っています。最初の一歩として、図書館のIC化(BDS、自動貸出機・返却機)を実施しました。
館内の掲示物に関しても、基本的にポスターやチラシは貼らないようにしています。具体的には、市内イベントや関係団体から受け取っていた紙ポスターはデータで支給していただき、それをサイネージに流して表示する運用にシフトしています。
当初、デジタルサイネージ導入の大きな目的は、スケジュール管理や館内案内でした。実際、多目的ホールの催しや会議室の利用状況、子育て健康センターでの検診案内などを表示するのに活用しています。
また、導入した時点では想定していなかったのですが、「施設として提示しておかなければならない情報を集約する場所」としての用途もあることに気付きました。施設建築にあたって寄付をしてくださった方のご芳名や公共情報の告知などを、デジタルサイネージで掲示しています。
紙の掲示物は場所や枚数に限りがありますが、デジタルサイネージは置く場所に制限がありません。告知物や公共情報などを集約できるメリットは大きいですね。
―デジタルサイネージの効果や使い勝手はいかがですか?
まだオープン直後で、私自身も操作に慣れている段階ではないので、正直なところ「使いこなしている」とは言いにくいです。ただ、仕組みとしては、それほど複雑ではないと思いますし、運用に慣れて、やることがわかってしまえば、一人で回せそうだなという手応えはあります。
ただし、市役所では職員の異動もあるため、属人化は避けなければなりません。凝りすぎたり、イレギュラーを多く入れたりするような複雑なオペレーションは避けるべきだと考えています。今後の継続性のためには、決まったフォーマットやレギュレーションをしっかり作って、それに従って運用していくのが大切だろうと考えています。
―今後の展望をお聞かせください
当初は「掲示物はすべてデジタル化し、一切の貼り紙をなくしたい」と考えていましたが、実際に施設の運用を始めると、なくせないアナログ掲示物があることも分かりました。例えば多目的ホールでイベントがあるときは、「ホールの入り口に案内パネルを置く」ほうが、速く、分かりやすく、利便性も高くなります。アナログがすべて非効率というわけでもないな、と考えています。今後は、デジタルとアナログを併用するような形で、運用をすり合わせていくことになると思います。
自治体業務のデジタル化には、時間がかかるかもしれません。しかし、公共施設のデジタル化は進めていかなければなりません。デジタル化を嫌がる声は職員の中にもありますが、「使える人にとって便利であること」は間違いないものです。これから長く使われる設備として、デジタル対応は当たり前にしておく必要があります。
ただし、すべての利用者が最先端の技術を好むわけではない、という点も考慮が必要です。なるべく便利に、しかし誰も取りこぼさない運用を意識しなければなりません。
一方で、今の小学生や中学生は、当たり前にデジタルを使いこなしています。タブレット端末を授業で使ってきた彼らにとって、現在の市役所の手続きは、びっくりするほどアナログで非効率なものに見えると思います。彼らが20代、30代になった時、われわれは「まだ手書きなんですか」「まだこんなことしているんですか」と突き上げられることになるでしょう(笑)。彼らにとって、ふじまるが「古臭い場所」にならないことも、非常に重要です。
デジタルネイティブ世代が成長する中で、快適に利用できる「箱」としてのデジタル化を整えることで、これからの地域社会に貢献していければと考えています。
_________今回は、お忙しいところ貴重なお話しをありがとうございました
お客様プロフィール
役所名
藤岡市役所
所在地
〒375-8601 群馬県藤岡市中栗須327番地
開庁時間
午前8時30分から午後5時15分(土曜日、日曜日、祝日および年末年始は除く)
URL
https://www.city.fujioka.gunma.jp/index.html

